事業活動紹介

環境保全

ヤマビルのいない里山づくり

 日本に生息するヒルの中でも、ヤマビルは人を吸血するヒルです。昔は限られた山奥でひっそりと生息していたヤマビルですが、現在は33都府県の里山近くや人家周辺にまで生息範囲を拡げています。
 木材自由化による森林の荒廃、狩猟人口の減少と高齢化、温暖化等が要因となり、ヤマビルの増加と生息範囲が拡大しています。ヤマビルの生息をなくすには、森林の手入れが大変重要な事です。私たち環境文化創造研究所は、安心して人と自然が共存できる場所づくりをめざして、ヤマビルのいない里山づくりのための調査・支援活動を行っています。


ヤマビルとは

 ヒル類顎蛭目に属する環形動物(ミミズの仲間)。赤褐色で背面に3本の黒い縦線があり、尺取虫のように移動します。
普段は動物を吸血していますが、ある程度吸血したら、剝れ落ちるため、動物がいる場所や獣道には多く生息しています。
 山に出かけた時に地面を這って靴から靴下の中に潜り込んで吸血します。通常は、歩道の落葉の裏や草・石の下に潜んでいますが、シカ・イノシシ・ノウサギなどの野生動物やヒトが近づいてくると動物の出す、二酸化炭素・体温や歩行時の振動などに反応して近づき、小さい歯で皮膚を切り裂き1時間程度吸血します。吸血されていてもほとんど気が付きません。

ヤマビルの産卵と成長 イメージ

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生息域拡大と吸血被害の増加

 山林作業に従事する人々やハイキング、キャンプ、渓流釣りに行った人々の間でヤマビルに吸血される被害が全国的に増えており、最近では里山近くの住宅地にまで吸血被害が及んでいます。
平成25年4月現在、ヤマビルが生息し、吸血被害の見られた地域は、北は秋田から千葉・神奈川・群馬・静岡・兵庫・滋賀など、南は宮崎・鹿児島・沖縄の33都府県にまで拡大しています。

ヤマビルによる吸血被害の情報が寄せられた地域 イメージ

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生息拡大と吸血被害の増加

 日本は国土の70%近くが豊かな森林で占められた、世界でも有数の森林大国です。しかし、1970年代からの木材自由化による木材価値の大幅な下落や炭・薪から石炭・石油への燃料転換が進んだことにより、林業の衰退と森林の荒廃が始まり、森林の手入れが行き届かなくなりました。
 樹木の除伐・間引きがされず、森には日光が差し込まなくなり、下草が生えず、多くの生き物の生息場所が次々と消えていきました。特にクマ、サル、シカ、イノシシなどの哺乳類動物は、餌場を求めて奥山から里山・人家周辺へと出現するようになりました。
 加えて、温暖化による降雪量の減少と積雪期間の短縮、狩猟禁止の野生動物保護策が長期間とられたことや、山間地域の過疎化・高齢化が進み全国的な耕作放棄地の増加などが要因となって野生動物の生息数の増加と分布域の拡大が見られるようになりました。また、これら野生動物による農林業被害も深刻になっています。
 ヤマビルはこのように増加したシカやイノシシなどを吸血する機会が増えるにつれて、ヤマビルも生息範囲を拡大し、シカ、イノシシなどに付着して里山近くや人家周辺まで運ばれてそこでヤマビルが定着・繁殖するようになり、ヒトへの吸血被害も全国的に多発するようになりました。

森林の荒廃と大型ほ乳動物の増加 イメージ

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効果的なヤマビルの防除対策

 ヤマビルの少ない地域では塩・木酢液などで防除したり、草刈りや落葉・枯れ木の撤去である程度の防除効果を上げることが可能です。しかしながら、ヤマビルが多く地域全体に拡大したエリアでは、総合的なヤマビルの防除対策を立てて計画的に実施する必要があります。

  • 生息数調査を行い、ヤマビルの多い地点を明らかにし、その後、殺ヒル剤を散布し(仔ビルの増加する9月-10月に散布すると効果的)生息密度を1/5〜1/10と大幅に低下させる(ヒトによるヤマビルの捕獲・除去も効果的)。
  • 新たに動物がヤマビルを運んで来たり、卵塊から仔ビルが増え、2〜3か月もすると元の生息数に戻ってしまうことが多いです。そこで、大幅に低下したヤマビルの生息密度を持続させるために、草を刈ったり、落葉・枯れ木などを片づけ、樹木の間伐・伐採をして地表面を乾燥させ、日当たりをよくし、ヤマビルが生息しにくい環境の整備を定期的に行ってヤマビルの侵入・定着・繁殖を防ぐことが大切です。
  • 行政機関と協力してニホンジカやイノシシに対する防護柵の設置や適正な生息数管理を行うなどの吸血動物対策を行うことも必要です。この対策は最近、山間地域で広がっている農作物被害にも有効です。
  • 以上の様な薬剤散布・ヤマビル捕獲と落葉掻き・草刈などの環境整備及び防護柵の設置などの吸血動物対策をうまく組み合わせて定期的かつ計画的に数年行う必要があります。

効果的なヤマビルの防除対策 イメージ


蘇 雲山

【研究員紹介】

谷 重和(たに しげかず)

一般財団法人環境文化創造研究所 主席研究員
ヤマビル研究会 代表 医学博士

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