Kanbunken|環境文化創造研究所

文化財保存修復学会 学会賞
学会賞は文化財および文化財に関連する領域において、保存および修復の学理、修復技術およびその応用などの研究および活動を通して、文化財の保存および修復の分野の発展に特別な功労があったものに授与する。(表彰規程第3条)
文化財保存修復学会ホームページより

第11回 文化財保存修復学会 学会賞受賞

受賞年月日:2017年7月2日
川越和四

1970年、イカリ消毒株式会社入社。
厚木・横浜営業所の所長および地区長を歴任し、文化財の生物被害防止対策のガス燻蒸に従事したのち、1993年から技術サービス部の部長を務めた。2013年1月、一般財団法人環境文化創造研究所入所。現在、同所にて文化財業務に関わる主席研究員として、全国の館に「文化財IPM」の普及を呼びかけている。
著書(共著)に『文化施設における害虫対策の実際:ネズミ・害虫の衛生管理』(フジ・テクノシステム 1999年)がある。

受賞理由
氏はPCO(ペストコントロール会社)に所属して、古くから文化財の生物被害防除に携わってきた。1970年代から1980年代にかけては、薬剤を用いた文化財の殺菌・殺虫燻蒸の実用化に協力し、その普及に貢献した。他方では、委託されたガス燻蒸による殺虫処理を行うだけでなく、博物館における生物被害防除のためには、環境と人間の健康に配慮し、館内外の虫の生息状況を常に把握することの大切さを早い時代から強調して、関与する館や研究機関に対し委託された業務以上の協力をおしまなかった。さらに2005年の臭化メチル全廃に際しては、殺虫燻蒸処置中心から予防中心の防除への転換を率先して目指した。そして文化財IPM普及のために企業人として力を尽くし、現在も環境文化創造研究所の主席研究員として文化財IPMの普及に努めている。博物館における業務の遂行においては、氏は常に協力者としての立場に立ち、国立民族学博物館の共同研究員を務める他は、特に表立っていない。しかし氏が業務を通じてIPM体制確立のために助力、助言した館は、国立民族学博物館、九州国立博物館、愛知県美術館など数多く、いずれにおいても、学芸員や研究者では果たせない重要な役割を果たしている。企業の利益を超えて、他の者にはできない役割を果たす氏の活動は、文化財保存分野に対する大きな貢献であり、その功績は学会賞にふさわしい。
受賞者コメント

川越和四

この度、文化財保存修復学会第11回学会賞をいただきました。私のように企業に所属し、文化財を食い荒らす(劣化させる)害虫やカビ類のガス燻蒸による防除業務を中心として文化財に関わってきた者は、このような表彰の対象ではないと思っていましたので、驚きでいっぱいです。ガス燻蒸による駆除の時代を経て、資料・環境・人間の健康に配慮した予防中心の防除、いわゆる文化財IPMの普及に携わったことが評価いただけたのではないかと思います。以前、ある館をお訪ねした際、地域に伝わる「民具の生物大被害」に遭遇したことがあります。ご担当者さま曰く、「この民具は虫についばまれているけれど、費用を掛けられないので手の施しようがない」。この一言が後々まで忘れられず、文化財を生物被害から守りたいという一心で努力しました。現在は、文化財IPMの普及に邁進しています。その一つとして、文化財IPMの考え方を伝えるクリンライフという機関誌の発刊を続け、相談や普及に努めています。

第10回 文化財保存修復学会 学会賞受賞

受賞年月日:2016年6月26日
森田稔

1954年岐阜県生まれ。
1980年名古屋大学大学院文学研究科史学地理学専攻 考古学専門博士課程(前期)修了。
神戸市立博物館学芸員、文化庁美術学芸課主任文化財調査官、京都国立博物館学芸課長、九州国立博物館学芸部長を経て、同副館長として勤めた。2014年4月より、一般財団法人環境文化創造研究所入所。同所にて理事を務めた。専攻は、考古学・文化財学。

受賞理由
氏は、考古学(窯業史、金工史)、文化財学の研究者であるが、1995年に起きた阪神淡路大震災を体験し、その被災文化財の復興事業に携わり、学会においても被災文化財救援の在り方をつくることに貢献した。
文化庁では、文化財管理指導官として、全国の美術館博物館の新設やリニューアルに際し、多数の施設の保存管理計画や設計を指導した。
また、文化財の虫害防除に利用されてきた臭化メチルの全廃が国際的に決まった際には、わが国の文化財を生物被害からどのように守るか、文化庁の先頭に立って働いた。
さらに、学会法人化の際には、機構改革担当理事として大きな貢献をした。これらの業績は学会賞にふさわしい。
受賞者コメント

森田稔(九州国立博物館)

この度、文化財保存修復学会第10回学会賞をいただきました。本来私のような文系の博物館学芸員や行政職の経験者はこうした表彰の対象ではないと思っていましたので、意外な感じですが、災害対策やIPMの導入に携わったことを今回評価いただいたのだと思います。以前、三輪嘉六元会長が学会の将来を考えた時、博物館の学芸員の育成も重要な課題だと言われたことを思い出します。IPMについては、今まで文字にしていませんでしたが、その歩みをしっかりと文字として残そうと、現在、環文研が発刊する「クリンライフ」での鼎談や対談を企画しています。21世紀の考え方が次を考える参考になれば幸いです。

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