特集

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された過去の連載コラムの中から、テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。

注目すべき食中毒(2)

東京食品技術研究所 所長(執筆当時) 鈴木達夫

食品 注目すべき食中毒(2)ジビエ

 ジビエの人気が高まっています。ジビエとは、狩猟で得たシカ、イノシシ、クマやマガモなどの野生鳥獣の食肉を意味するフランス語です。農水省の統計によると、平成28年度ではシカ5万5000頭、イノシシ2万7000頭など計8万9000頭(野鳥を含む)が解体処理され、ジビエとして1000トンの食肉が流通しました。シカ肉やイノシシ肉は、高タンパク、低脂肪で、適切に処理された肉は、味も良いことから地域振興の有望な食材と期待されています。また、耕作放棄地の拡大、過疎化、野生鳥獣保護などにより、野生鳥獣による農作物被害が深刻化し、平成28年度では被害額172億円となっています。このようなことから、政府は野生鳥獣の肉をジビエとして利用拡大を図り、ジビエの消費量を倍増させる取組みを進めています。
 ウシ、ブタやウマなどのと畜・解体は「と畜場法」によって規制され、食鳥については「食鳥検査法」によって規制されていますが、ジビエはこれらの法の規制は受けず、食品衛生法によって規制されています。ジビエが原因となった食中毒としては、E型肝炎、トリヒナ(旋毛虫)などの寄生虫や腸管出血性大腸菌・サルモネラなどの細菌性食中毒があります。ジビエ料理では、肉の中心部まで十分に加熱するとともに、使用後の調理器具は交差汚染を避けるための消毒が欠かせません。
(2018年5月号掲載)

食品 注目すべき食中毒(2)バーベキューでの注意事項

 夏休みになると、家族や友人たちと海や山でバーベキューをする方もたくさんいらっしゃいます。私の自宅から近い多摩川沿いの河川敷でも、週末になると多くのグループがバーベキューを楽しんでいます。
 しかしバーベキューでも、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラなどによる食中毒の事例が多くあります。バーベキューには小さなお子さんも参加されますので、十分な注意が必要です。特に、腸管出血性大腸菌による食中毒では小児や高齢者を中心に、重症の場合、急性腎不全や脳障害などを発症し、死亡に至ることもあります。
 食中毒を防ぐために、準備の段階で肉などの食材は肉汁が漏れないようにしっかりとビニール袋に入れ、クーラーボックスなどを利用して細菌が増殖しないよう10℃以下で保存し、調理直前に取り出すようにしましょう。また、肉や魚介類はしっかり加熱することです。中心部までしっかり火を通し、生焼けで食べることは絶対にやめましょう。生の肉などを扱ったトングや箸などは、焼きあがった肉やサラダなどを食べるときは使わないようにしましょう。もちろん、手洗いも忘れずに。
 バーベキューでは、ふだん調理をしない方が調理をしたり、お酒を飲みながら調理することも多くなります。参加者1人ひとりが衛生に配慮して、夏を楽しみましょう。
(2018年7月号掲載)

食品 注目すべき食中毒(2)ヒラメの生食による食中毒

 ヒラメは白身魚の王様といわれ、刺身や寿司のネタに用いられる高級食材です。フランス料理でもムニエルなどに使われます。ヒラメは、海底であまり動かず酸素の消費量も多くありません。水を汚染することが少ないので、養殖も盛んに行われています。
 ヒラメの生食による食中毒に、クドア・セプテンプンクタータがあります。これは、ヒラメの筋肉中に寄生する粘液胞子虫類を原因とする食中毒です。クドアが多数寄生したヒラメを食べると、食後数時間で一過性の下痢や嘔吐(おうと)などをしますが、ほとんどの場合、症状は軽く速やかに回復します。ヒラメによるクドアの食中毒発生状況は、平成23年から29年の7年間で事件件数189件、患者数2118名となっています。クドアの食中毒は夏場に増え、その後、9月から10月にかけて多発し、冬から春には発生が少ない傾向にあります。
 ヒラメを冷凍または加熱すれば、クドアによる食中毒は防ぐことができます。また、養殖場の対策としては、クドアが寄生していない稚魚の導入、飼育環境の整備などがあります。さらに、出荷前に検査し、クドアの寄生が確認された場合には活魚や生鮮品での出荷を自粛するなど、国内の産地では対策が進んでいます。輸入されたヒラメでの食中毒も多いことから、海外の産地での対策強化も求められます。
(2018年9月号掲載)

食品 注目すべき食中毒(2)ボツリヌス食中毒

 「生後1歳未満の乳児には、ハチミツを与えないでください」と注意喚起されています。これは、ボツリヌス菌が産生する毒素によって、乳児ボツリヌス症を発症することがあるからです。
 ボツリヌス菌は、酸素の存在を嫌う嫌気性菌のひとつで、加熱に強い芽胞(がほう)※ を作ります。ボツリヌス食中毒の原因食品の多くは、保存食品や発酵食品です。ボツリヌス食中毒が発生することは非常に少ないのですが、発症すると重篤になることが多いのも特徴です。また、米国では毎年、乳児を中心に100例以上の患者が発生しています。
 ハチミツは栄養に富んだ食品で、含水分量が少ないことや酸性であることなどから、保存方法をしっかりと守れば長期に保存できます。しかし、ハチミツにはボツリヌス菌の芽胞が含まれていることがあり、1歳未満の乳児では、腸内環境が十分に整っていないために、腸管内でボツリヌス菌が増殖することがあります。腸管内で増殖した菌は強力な毒素を産生し、食中毒を起こします。1歳を過ぎると腸内環境が発達し、抵抗力が強まるので乳児ボツリヌス症を発症することはありません。
 ボツリヌス菌は、土壌、河川、海洋などに広く存在しています。食品が低酸素状態になると増殖し、毒素を産生します。缶詰や真空パック食品などは、膨張や異臭があった場合には食べないようにしましょう。
(2018年11月号掲載)

※ 一部の細菌が増殖に適さない環境におかれたときに形成する、熱・薬剤・乾燥などに強い細胞構造で、
増殖に適した環境になると発芽して菌体に戻る

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