イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

見逃さないで!病気のサイン(4)

クリンネス編集室

つまずきやすい

 平坦な道路を歩いていて、つまずきそうになることがあります。新しい靴を買ってまだ履きなれず、靴の大きさ、形、重さに慣れていないときなどによく起こります。また、加齢に伴ってつまずくことも多くなります。加齢による運動能力の衰えを自覚できずに、無理をすることも原因のひとつです。
 加齢現象とは別に、急につまずくことが多くなってくる場合は注意が必要です。筋肉が萎縮するような病気や、神経が変性していく病気では、自分が思っているように足運びができず、つまずきやすくなります。これらの筋肉・神経系の病気では、初期症状として、手にも力が入らずコップを落としたりすることもあります。高齢者に多い変形性股関節症では関節が変形し、きちんと地面を踏めずにつまずくようになります。動脈硬化が進んで小さな脳梗塞が起こったときにも、つまずきやすくなって気づかれることがあります。視力の急激な低下や視野の狭窄(きょうさく)など、眼の異常によってもつまずきやすくなります。ビタミンAが不足すると暗いところでの視力が低下し、夜道で転びやすくなります。そのほか、パーキンソン病や低血糖症などでもつまずきやすくなることがあります。最近、つまずくことが多いなと感じたら、医療機関を受診して相談してみるとよいでしょう。
(2015年7月号掲載)

食欲がない

 暑い季節を迎え、食欲が落ちてくることがあります。体調不良や悩みごとなどで食欲がないような場合は、それが一過性であれば、あまり気にする必要はありません。ただし食欲が低下して十分な食事が摂れない状況が続くと、原因がなんであれ、栄養不良の状態となって健康に悪い影響を及ぼします。また、心理的な原因が考えられる場合で食欲不振が長期間に渡るときには、うつ病など精神的なケアが必要な場合もあり、精神科を受診して相談する必要があります。
 特に思いあたる原因がないのに、食欲がなくて食事が進まない状態が1週間以上続くようなときは、要注意です。お腹が痛い、胃のあたりがむかむかするといったような症状が伴う場合には、胃潰瘍など消化器の病気が考えられます。また、食べ物が詰まった感じや、お腹が張った感じがして食べられないようなときは、消化管の閉塞などの通過障害がある場合もあり、緊急の受診が必要になります。
 なんとなく身体がだるいような状態が続いて食欲がない場合は、肝臓や腎臓の病気が潜んでいることがあります。顔色が悪かったり、尿の色がいつもと違うような症状があるときも、急いで受診しましょう。ほかにも、ホルモン分泌や神経系の異常などでも食欲が低下することがあります。食欲がない状態が続くときは、医師に相談しましょう。
(2015年8月号掲載)

シミが多くなる

 顔をはじめ皮膚にできるシミは老人性色素班ともいい、一般に加齢によって増えてくる色素沈着を指します。色素沈着は、加齢以外にも紫外線が強く影響すると考えられており、そのほかホルモンやストレスなども、原因になるといわれます。中高年の女性に見られる肝斑(かんぱん)なども色素沈着によるものです。
 加齢によるシミ(老人性色素班)や肝斑だと思っていても、病気によって色素沈着が生じる場合があります。たとえば副腎の病気であるアジソン病では、副腎ホルモンの分泌異常が起こって疲れやすくなったり痩せてきたりしますが、顔面、特に口の周囲などの色素沈着を生ずることが特徴です。膠原病(こうげんびょう)のひとつである全身性エリテマトーデス(SLE)では、関節痛や口内炎など全身に多彩な症状を起こしますが、日光に過敏になり、顔面に特徴的な紅班(赤い色素班)が生じます。
 色素沈着ではありませんが、慢性肝炎や肝硬変などの肝臓の疾患、慢性腎炎などの腎臓の疾患では、皮膚の色が黒ずんで見え、シミが増えたと勘違いされる場合もあります。
 また色素沈着に腫瘤(しゅりゅう)※ が伴うような場合は、レックリングハウゼン病のような神経線維腫や、メラノーマなどの悪性腫瘍(しゅよう)も疑う必要があります。シミが増えて、ほかの異常も伴うときは皮膚科に相談しましょう。
(2015年9月号掲載)

※ はれもの。こぶ

「テレビの音が大きい」と言われる

 家でテレビを見ているとき、家族から「音が大きすぎるから、もっと音量を下げて」などと言われることはありませんか。特に高齢の方では思い当たる節もあるのではないでしょうか。一般に、人の聴力は加齢とともに衰えてきます。特に高音部から低下してくることが多いので、ニュース番組の女性キャスターや、ドラマの女優さんの声が小さくて聞き取りにくく、ボリュームを上げてしまうことが多いようです。加齢による聴力低下は徐々に自覚されますが、今までは普通に聞こえていたのに、急にテレビの音量を大きくしなければ聞こえなくなったようなときは、ほかの原因による聴力の低下を疑う必要があります。
 突発性難聴という病気は、突然耳が聞こえにくくなります。すぐに自覚できる場合もありますが、家族や友人からの指摘で気がつく場合もあります。突発性難聴は早期の治療で聴力が改善する場合も多いので、異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診してください。また、それほど突然ではないのですが、音楽プレイヤーなどからイヤホンを使って大音量で音楽を聴いていると、若くても騒音性難聴をきたすことがあります。騒音性難聴も高音域から聴力が低下しはじめますが、初期にはあまり自覚できません。耳が聞こえにくいと感じたら、一度聴力検査を受けて、早期に対策をとることが必要です。
(2015年10月号掲載)

顔が赤い

 お酒を飲むと、顔が赤くなります。少量のお酒でも、顔がまっ赤になる人もいます。個人差はありますが、アルコールの影響で顔面の毛細血管が拡張することにより、顔が赤くなります。お酒も飲んでいないのに、顔が赤くなる人もいます。多くは体質によるもので、過度の緊張で顔が赤くなる人もいれば、あまり緊張していなくてもちょっとした刺激ですぐに顔面が赤くなる人もいます。
 顔が赤くなっても多くの場合は心配いらないものですが、なかには大きな病気が隠れていることもあります。肝臓の機能が落ちていると、顔が赤くなりやすくなります。顔全体が赤くなるのではなく、顔の表面にクモの巣のように毛細血管が浮き出て赤く見える場合は、クモ状血管腫といって肝硬変の人に見られる症状です。また、全身性エリテマトーデスという病気では、鼻を中心に蝶が羽を開いたように赤くなることがあり、蝶形紅班と呼ばれます。風邪などで発熱している場合も顔は赤くなりますが、高血圧症や糖尿病でも顔が赤くなることがあります。特に肥満傾向で赤ら顔という場合は、要注意です。また、青魚によるヒスタミン食中毒でも、顔面が紅潮します。
 今まではそうでもなかったのに、最近急に顔が赤いのが目立ってきたというようなときは、一度受診して調べてもらいましょう。
(2015年11月号掲載)

疲れやすい

 季節の変わり目や新しい職場へ異動した後などに、疲れやすいと感じるときがあります。寒暖の変化や心理的なストレスの影響が、肉体的な疲労として蓄積していくと考えられますので、無理せず休養をとることが必要です。けれど、思い当たることがないのに最近疲れやすくなってきた、という場合には大きな病気が潜んでいることもあります。
 急性肝炎の初期や慢性肝炎の状態が悪くなったときなどは、いつもと違う疲労感、倦怠感を感じます。特に現在中高年の方は、かつての医療環境の影響でC型肝炎の感染を受けていることがあります。一度は血液検査を受けることをお勧めします。
 腎臓が悪いと、老廃物が体内に溜まってきて疲れやすくなります。尿の色が変わったり、浮腫(ふしゅ)があるときには要注意です。また、動悸、息切れなどを伴う場合には心臓や肺の病気が原因のこともあります。
 糖尿病や甲状腺の異常では全身の代謝がうまくいかなくなり、疲れを感じる場合もあります。身体のどこかに、がんや慢性の炎症があっても疲れやすくなります。更年期障害ではホルモンバランスが崩れるために疲れやすくなりますが、女性だけでなく男性でも更年期には注意が必要です。そのほか慢性疲労症候群という病気も注目されています。休養をとっても疲れがとれないという場合は、医師に相談しましょう。
(2015年12月号掲載)

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