- 日替わりコラム
Wed
4/2
2025
前回(2月号)、猫は西アジアでネズミ退治能力を買われて家畜化され、その後ネズミ退治要員として貿易船に乗せられ、世界中に運ばれていったという話をしました。猫は、人々の近くで暮らしながら牧場や酒蔵などでネズミを捕って自活する、一風変わった家畜だったといえるでしょう。
猫は日本にもネズミ退治の役目を負って入ってきました。仏教が伝えられた時、仏典や仏像がネズミにかじられないよう猫とともに送られたといわれています。ただ日本に着いた猫はその後、貴族たちに大切に飼われていたという点でほかの国と少し異なります。平安末期の絵巻物には紐でつながれた猫が描かれています。また鎌倉時代の絵巻物でも猫はつながれていて、今でいう室内飼いをされていました。家の中でつながれていてはネズミを捕ることはできません。つまり日本にやってきた猫は最初、完全なるペットとして飼われていたことになるのです。
仏典や仏像とともにやってきた美しい生きものを、貴族たちが大切に飼い始めたからだったのかもしれません。また当時の街中には犬たちがほっつき歩いていましたから、外に出すと襲われる心配があったのかもしれません。いずれにせよ、日本にやってきた猫にネズミ退治の役目が戻り、定着したのは江戸時代に入ってからだと考えられています。
動物ライター加藤由子
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