- 日替わりコラム
Thu
4/10
2025
「君は、うがった見方をする人だな」と言われたら、あなたはどんな気持ちになるでしょうか。
「うがつ」は「穴を掘る」こと。辞書上の「うがった見方」は、対象の表面だけではなく、内側までも見ようとする姿勢を指す言葉です。物事の見えにくいところまで掘り下げていき、本質を的確に捉えようとする立派な態度ともいえます。冒頭のように言われたら、褒められていると受け止めていいでしょう。
しかし、文化庁の調査では「うがった見方」を「疑って掛かる」という意味だと考える人が多いことがわかっています。悪い意味ではないのに、マイナスに受け止められることの多い言葉の一つなのです。
受け取り方が変わってしまうのはなぜでしょうか。「うがった見方」をされる側にしてみれば、見てほしくないところまで探られている、不審の目を向けられていると感じるのかもしれません。また、そもそも「うがった見方」は、隠れているものを見つけ出そうとするのですから簡単ではありません。つい度が過ぎたりやり方を間違えたりして、「うがち過ぎ」になってしまうこともありそうです。
どんな言葉も、辞書どおりの意味で受け止められるとは限りません。相手や文脈、場面などによって、揺れ動くことがあるのです。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
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