- 日替わりコラム
Wed
8/6
2025
7月号でも紹介された第27回国際昆虫学会議(昨年8月に京都で開催)では、衛生害虫に関するシンポジウムが10本開催されました。
登録された101演題のうち、蚊の演題が57、ハエ類25(ブユとヌカカ8、サシチョウバエ7、サシバエ5、イエバエ2、ツェツェバエ2、クロバエ2)、トコジラミ15、マダニ4と続きます。その中の「アルボウイルス感染症とそのベクターの脅威に立ち向かう」と題した集会では、日本からも複数の話題提供がありました。たとえば、日本脳炎のベクター(媒介昆虫)であるコガタアカイエカは、「桜の開花日」に合わせて越冬明けの個体が出現すること、次世代シークエンサー※ などによりマダニから網羅的にウイルス遺伝子を検出することで、患者発生の前に病原ウイルスの発見が可能になったこと、クロバエが高病原性鳥インフルエンザの流行拡大に関わっていることなどが紹介されました。
海外からは、台湾では近年デング熱の流行が続き、ネッタイシマカのみならず、ヒトスジシマカ対策も求められていることや、米国にはウエストナイルウイルスが定着し、増幅動物の鳥類とベクター蚊との接点の場である公園緑地のあり方に関心が集まっていることなどが紹介されました。これら海外の状況は、日本の近い将来を想起させるものに思えました。
※ DNAやRNAの塩基配列を高速かつ大量に解読するための装置
東京大学 大学院農学生命科学研究科澤邉京子
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