- 日替わりコラム
Thu
8/21
2025
私は40年近く、中央区保健所で銀座や築地、日本橋などにある飲食店の監視指導をしてきました。屋台のラーメン屋さんから高級ホテルの厨房までいろいろな施設で調理人の方々とお話しする機会がありました。その中で、現場でなくては経験できない知恵を得ることがあります。
銀座にある西洋料理店の厨房に伺うと、点火したガス台で何も入っていないステンレスバットが焼かれていました。調理長さんに「何をしているのですか?」と尋ねると「バットを焼いてからホワイトソースを小分けにして冷やす」とのこと。確かに脇には寸胴に入ったホワイトソースが水槽で冷やされていました。「なるほど、水槽で粗熱を取って、空焼きしたバットに入れれば、二次汚染が防げるし早く冷やせるということだな!」と得心しました。調理長さんによれば、こうすることでホワイトソースの日持ちが格段に良くなるのだそうです。簡単なようでなかなか実行できない技です。カレーなどの煮込み料理は、嫌気性を好むウェルシュ菌による食中毒が発生します。加熱後できるだけ早く冷やして冷蔵保管することが肝心です。調理長さんに「どちらで修業されたのですか?」とお伺いしたところ、某有名ホテルで修業をなさったとのことでした。さすがだなあ!と納得するとともに、西洋料理の歴史と神髄に触れたような気がしました。
元保健所食品衛生監視員小暮実
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