- 日替わりコラム
Fri
10/10
2025
私は、40年近く中央区の保健所で銀座や築地、日本橋などの飲食店の監視指導をしてきました。屋台のラーメン店から高級ホテルの厨房まで、いろいろな施設で多くの調理人の方々とお話しする機会がありました。その中で、現場でしか学べない知恵を得ることがあります。
銀座の有名な寿司店に伺った際、布巾とハケが大鍋に入れられガス台に掛けられていました。「何をされているのですか?」とお尋ねすると、10分間煮沸消毒しているとのことでした。布巾類は塩素消毒する店がほとんどですので、衛生の基本である煮沸消毒をされているのを見て、さすがだなぁと感心しました。調理長のお話では、煮沸消毒するとハケの毛が抜けにくくなるとのことでした。
また、築地のとある料亭では、厚さが30cm、長さが1m以上もあるまな板が設置されていました。中華料理店などでは中央が凹んだまな板をよく見かけましたが、この料亭のまな板は馬の背のように丸く削られており、包丁の刃傷がほとんどありませんでした。このまな板を使用できるのは花板(最上位の板前)だけで、自然に水が切れて乾燥しやすいよう、毎週のようにカンナ掛けしているとのことでした。衛生の基本は「洗浄と乾燥」であり、煮沸消毒できればさらに完璧ですね。こうした日本料理の調理人の知恵をぜひ参考にしたいものです。
元保健所食品衛生監視員小暮実
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