- 日替わりコラム
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10/13
2025
たとえば仕事上で、上司や取引先に対して文書を作成するとき、あるいは、何かをプレゼンするときなどには、できるだけ正確に、そしてわかりやすく伝えたいと考えるでしょう。しかし、正確さとわかりやすさの両方を追求するのは簡単なことではありません。
正確に伝えるとは、相手に受け取ってもらうべき情報を誤りなく、かつ過不足なく届けることです。そのためには、詳しいデータや専門的な用語を駆使する必要があるかもしれません。厳密さを求めれば、情報量は多くなり、内容も高度になっていきます。
一方、わかりやすく伝えるとは、相手の立場に立って、内容を十分に理解できるように歩み寄ることです。そのためには、優先して伝えるべき内容に絞り、相手が知っている言葉だけを使って説明します。情報量と細部の詳しさを犠牲にして、相手の理解を優先するのです。
このように、正確さとわかりやすさには、対立する側面があり、両方を存分に求めることはできません。明快な対処方法はありませんが、両者の対立の構図を理解しているだけでも強みになります。文書作成や説明の目的がなんであるのか、どのような人が相手なのか、お互いにどれくらいの共通理解ができているのか、そういったことを考えながら、バランスをとっていくよう努めましょう。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
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