- 日替わりコラム
Wed
10/15
2025
猫が家畜になって以降もずっと狩りをし続けたのは、飼い主から与えられる餌だけでは栄養が足らないからでした。完全肉食動物である猫にとって、いわゆる”猫まんま“は主食にはなりえず、小動物を捕まえる能力のない猫は生きていけませんでした。だから猫は、家畜として姿形は変わっても、狩りをするという習性は野生のままだったわけです。
ところが必要な栄養を満たしたキャットフードの出現は、狩り能力のない猫をも生かすことになりました。さらに室内飼いの普及が猫を一生”子猫気分“のままでいられるようにしたのです。つまり、狩りをする必要がなく、飼い主が母猫のようにかわいがってくれる暮らしが続くせいで、猫たちはオトナになる必要がなくなったのです。子猫の気分のままでいても何も問題がないのですから当然でしょう。かくして猫たちは、いくつになっても子猫のように母猫(飼い主)に甘え、子猫のように寂しがり、子猫のように無償の愛を求め続けるようになってきました。そして私たちは依存されればされるほど「かわいい」と思い、愛おしく思うものです。つまり、現代の猫と飼い主は疑似親子として深い絆を結び始めているわけです。
家畜化の初期において超野性的だった猫は今、野生とはまったく無縁といえる世界で愛情のみを求めて暮らし始めているといえるのです。
動物ライター加藤由子
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