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11/4

2025

岐路に立つ食(1)「飽食」と「飢餓」

 「飽食」と「飢餓」という正反対に見える食の状態が同時に存在している時代に、私たちは生きています。こうした極端な姿(善と悪、明と暗など)を思い浮かべることは、考えるきっかけとして有効です。
 たとえば、かつては「飽食の時代」といわれ、十分な量の豊かな食(=豊食)を消費していた日本ですが、いつのまにか、乱れた食生活(=崩食)などが指摘され、近年では一人で食べる「個食」から、より孤立感の強い「孤食」へと変化し、さらに貧困に悩む子どもたちのための「こども食堂」なども急増しています。
 一方、農林水産省によれば「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」(食品ロス)は令和5年度で年間464万トン(一人当たり約37kg)に達しています。
 世界も同様です。FAO(国連食糧農業機関)によれば、世界の栄養不良人口は2014年の約5.4億人から、2023年には約7.3億人(総人口の9%)に増加しています※ 。
 「先進国では…、途上国では…」という従来の視点は、マクロで見ればおおむね該当しますが、日本のような先進国においても「飽食」と「飢餓」が混在しつつあります。そこに、食料を確保する上で重要な食料自給率の問題も絡んできます。

※ FAO, The State of Food Security and Nutrition in the World, 2024, p.5.

宮城大学 副学長 食産業学群 教授三石誠司

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