- 日替わりコラム
Wed
11/26
2025
たとえネズミを駆除しても、しばらくすると元の数に戻ってしまうことがよく見られると思います。しかし、なぜこの「リバウンド現象」が起こるのか、これまでわかっていませんでした。一つの可能性として、駆除を逃れたネズミが再びネズミ算的に増えた結果であることが考えられます。しかし、もともといたネズミがいなくなったことで、この「新天地」に向けて、周辺地域から多くのネズミが移動してきた可能性も大いに考えられます。
この点を明らかにするため、研究者たちはブラジル・サルバドール市のスラム街にて調査を行いました※ 。ネズミ駆除の前後に241頭のドブネズミを捕獲して、彼らの遺伝的な変化を調べてみました。すると、駆除後のネズミたちでは、遺伝的な多様性が大きく失われていることがわかりました。一方で、ネズミ同士の血縁関係は駆除前より高くなっていることもわかりました。さらに、駆除前には平均して3.7%程度のネズミだけが持っていたさまざまな遺伝子があったのですが、駆除後にはこれらの遺伝子を持つネズミがいなくなりました。
これらの結果から、駆除後に起こる「リバウンド現象」は、駆除を生き延びたネズミが再び増えた結果である可能性が高いことがわかりました。
※ Byers Kaylee A et al. “Rats about town: a systematic review of rat movement in urban
ecosystems”. In: Frontiers in Ecology and Evolution 7, p. 13(2019)
東京大学 大学院農学生命科学研究科 准教授清川泰志
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