- 日替わりコラム
Tue
3/24
2026
ラジオ番組『森繁の重役読本』の台本を担当した向田邦子さんを森繁久彌(もりしげひさや)は高く評価する一方で、構成力の弱さを感じていました。これは向田さんの師匠にあたる市川三郎も同意見で、特に「いろごと」の描写は未熟だったようです。しかし森繁久彌は、向田さんのレベルであれば、連続ドラマの「場を踏む」ことで実力は向上すると考えました。そして期待どおり、『七人の孫』は、向田さんの初期の代表作になります。
ドラマ『七人の孫』には、番組の冒頭に1分間の「森繁タイム」がありました。北原亮作という73歳の高齢男性の役柄を活かして、森繁久彌がトークをするコーナーです。あるときは世相を痛烈に切り、ある回では皮肉交じりに流行を揶揄する。本来なら角が立つことでも、北原亮作の言葉として語られると、ものすごい説得力がありました。これが大いに人気を集め話題となったのです。また、いしだあゆみ、樹木希林※ など、このドラマでデビューし、後に有名になった方もいます。特に樹木希林はお手伝いの「おとしさん」という役で出演し、森繁久彌の度重なるアドリブに臆することなく、見事なアドリブで応じるという離れ業をやってのけました。森繁久彌の名言に「芝居の仕事は、私の『真剣な遊び』です」というものがあります。『七人の孫』は、この言葉にもっともふさわしい傑作ドラマだと思います。
※ ドラマ当時は、旧芸名「悠木千帆(ゆうきちほ)」
写真技術研究所別所就治
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