- 日替わりコラム
Wed
3/25
2026
ムラサキシジミの幼虫の随伴アリは、幼虫の分泌する液をなめるとその場にとどまり幼虫の”見張り番“に固執し始めます。幼虫の号令に敏感に反応して外敵を追い払い、幼虫を守る行動も強まります。
そのからくりはこうです。幼虫は腹部の分泌腺から糖やアミノ酸を含むご褒美を分泌し、必要なときは触角状の器官を反転させて外敵襲来を警報します。この報酬は単なる餌ではなく、随伴アリの行動を変える”操作薬“として働くことが実験で示されました。分泌液を与えた群では、シャーレの中央線を横切る回数が少なくなり、徘徊意欲が抑えられます。さらに、脳内のドーパミン量が低下しており、薬理的にドーパミン系をいじっても同様に歩行強度が減ります。その結果、幼虫の周囲にとどまる護衛が維持され、襲来警報には素早い攻撃で応じます。分泌液を継続して受け取った随伴アリは、分泌腺を塞いだ幼虫の随伴アリよりもしつこく幼虫を取り巻き、そばでじっと護衛する時間が長くなります。こうして幼虫は少ないコストで護衛サービスを引き出し、捕食や寄生のリスクを抑えることにより資すると考えられます。
見た目は相利共生に見えても、アリの幼虫分泌液への需要より、幼虫のアリへの依存度のほうが高いため、アリを惑わすこの成分は幼虫がアリを引き留めるために進化した妙薬と考えられています。
参考文献:Hojo, M.K., Pierce, N.E., & Tsuji, K.(2015). Current Biology, 25: 2260–2264.
九州大学 大学院 理学研究院 助教髙須賀圭三
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