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Wed

6/24

2026

恋するオスバチを運び屋にするツチハンミョウ

 オスのハナバチは、茎の先に止まっている”メス“を見つけると、嬉々として飛びつきます。ところが相手は本物のメスではありません。ツチハンミョウの1齢幼虫たちが植物の先端に群れ集まり、見た目と匂いの両方でメスバチを装った塊です。
 幼虫は1匹で行動せず、集団で協力し合うことではじめて十分なフェロモン量と輪郭を作り出します。オスはその化学信号に誘われて偽の交尾を試み、その瞬間に幼虫は体にとりつきます。さらにオスが本物のメスと交尾すると、幼虫はそこでオスからメスへの”乗り換え“に成功し、メスバチの巣へと運ばれます。巣に入った幼虫は、寄主がわが子のために集めた花粉や蜜、時には寄主の卵まで食べて成長します。つまりオスは、求愛の相手を見つけたつもりで、寄生者のための運び屋に仕立てられているのです。巧妙なのは、このだましの設計図が寄主ごとに細かく調整されていることです。土地が違えば、幼虫集団はその地域のメスバチに似た匂いの配合を出し、オスが探索する高さに合わせて陣取る位置まで変えるのです。
 化学擬態と便乗輸送を2段に重ね、恋するオスの求愛行動を利用して、幼虫が自力ではたどり着けない寄主の巣への片道切符に変える。乾いた砂地でくり広げられる、あまりに鮮やかな寄生戦術です。

参考文献:
Saul–Gershenz, L. S. & Millar, J. G.(2006)PNAS, 103: 14039–14044.
Saul–Gershenz, L., Millar, J. G., McElfresh, J. S. & Williams, N. M.(2018)PNAS, 115: 9756–9760.

九州大学 大学院 理学研究院 助教髙須賀圭三

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