- 日替わりコラム
Wed
7/8
2026
白い小型の蛾であるアメリカシロヒトリは、1940年頃までは北米でのみ見られましたが、その後中央ヨーロッパや東アジアに侵入しました。日本では1945年に東京で初めて発見されました。侵入後およそ30年間は年2世代(二化性)の生活史を示していましたが、その後日本全国に分布を拡大し、生活史にも変化が見られるようになりました。その様相を長年研究してきた県立広島大学の五味正志教授の最近の研究※ によると、1990年代には関東地方の北部では二化性、南西部では三化性を示し、その境界は北緯36度付近に位置していました。ところが、近年の気候変動により急速な変化が生じているようです。
本種は蛹で休眠して越冬します。春と夏の長日下では休眠せずにすぐに羽化しますが、秋の短日下では休眠が誘導され蛹で冬を迎えます。2015年前後に宇都宮、水戸、足利、前橋、つくばの5集団を用いて、蛹の休眠誘導に関わる臨界日長(50%の個体に休眠を誘導する日長)を調べました。すると、北部集団の臨界日長は1990年代とほぼ変化がなかったのに対し、南部のつくば集団では約11分短縮していることがわかりました。この変化と気温の上昇により、つくば集団では以前より遅い時期に休眠が誘導されるために、生活史は二化性と三化性が混在する状態から、三化性へと移行したと推察されました。
※ Gomi T.(2026)Applied Entomology and Zoology.
https://doi.org/10.1007/s13355-025-00947-3
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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