- 日替わりコラム
Tue
7/28
2026
命をかけて食の大切さを教えてくれた父は、私にとって親友であり、心から尊敬する存在でした。
父は東京水産大学(当時)を卒業後、中学校の事務員として働いていました。下宿先の隣に住んでいた母と出会いました。当時としては163cmと背が高く目立っていた母と、色白で都会的な父との恋は、片田舎では噂になるほどだったそうです。結婚には「家を持つこと」という祖父の条件があり、父は借金をして海岸近くの痩せた土地に、マッチ箱のような小さな家を建て、母と新しい生活を始めました。結婚後の暮らしは決して裕福ではなく、私はその苦労話を何度も聞かされました。
それでも幼い私の目に映っていたのは、どこか飄々とした父と、懸命に働く母という対照的な姿でした。父は日々の中で自分の時間を大切にしていました。囲碁を打ち、映画館に通い、ささやかな楽しみを見つけては味わう人でした。とりわけ本を愛し、小遣いのほとんどを本に費やしていました。通勤時や就寝前、職場の休憩時間、さらには入浴中に読む本まで、常に複数の本を同時に読み進めていたのです。脱衣所には本に加えて英字新聞と英和辞典が置かれ、学び続ける姿勢がごく自然に生活の中に溶け込んでいました。そんな父は、若い頃から小説家になるという大きな夢を抱き続けていました。
ローカルフードサイクリング株式会社 代表たいら由以子
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