- 日替わりコラム
Tue
8/11
2026
「泣いていたら猫が涙をなめて慰めてくれた」という話をよく聞きます。気持ちは痛いほどわかりますが、猫は感情の動きで涙を流すということはないことから、人間の涙の意味がわかるとは思えません。とはいえ、「水道の蛇口から出る滴をなめるのと同じ」とはなかなか言えません。
この「美しき誤解」は、人が猫を庇護する立場にいるときに生まれるのでしょう。親の愛を注ぐ飼い主にとって猫は幼子(おさなご)。その行動が「ママ、泣かないで」と言っているように思えるのは無理のないことです。
では、人と猫とが同等の立場だとどうなるのでしょう。昔、子連れで我が家にやってきてそのまま居ついた猫がいました。その母猫には妙に老成した雰囲気がありました。放し飼いがまだ当たり前の時代で、やがて彼女は妊娠し、うちで子猫を生みました。そして出産して数日後の夜中、彼女は私の布団にやってきて中をさんざん点検し、それから子猫を一匹ずつくわえてきて布団の中に入れ、全部入れ終わると、そのまま外に出て行きました。
点検開始から運搬終了までの間、身動きもせずに見ていた私の結論は、「ベビーシッターを頼まれた」でした。朝帰りをした母猫に、私はそれ以後、連帯感のようなものを感じていました。もし彼女が私の涙をなめたとしたら「自分の水飲みから飲みなさいよ」と言ったと思います。
動物ライター加藤由子
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