- 日替わりコラム
Tue
9/8
2026
「菊作り 菊見るときは 陰の人」は文豪・吉川英治の句です。ある菊人形展で平清盛の見事な菊人形が表彰されたとき、それを作り上げた職人は舞台袖で静かに見守るだけでした。その姿に感銘を受け、詠んだものだそうです。今を盛りと見事に咲く菊や、表舞台で称賛を浴びる菊人形の陰には、一年にわたり丹精込めて菊を育てた職人の労苦があります。この句は、その見えない努力の尊さを教えてくれます。
ヒット商品が誕生するときにも、必ず「陰の人」がいます。売上が伸びれば、まず営業部門が評価され、次に企画部門が評価される傾向があるようです。しかし、その商品の開発に向けた技術者の地道な陰の努力は、見逃されがちです。どんなに素晴らしい企画であろうと、それを形にできなければヒットにはつながりません。商品があってこそ初めて売上が生まれるのです。にもかかわらず、開発者への評価が少ない現実に、如何ともしがたいもどかしさを感じるのです。
人知れず行う善行や、見返りを求めずに行う隠れた徳行を「陰徳」といいますが、現代社会では「それは綺麗ごと」と言われてしまいかねません。それでも私は、「捨てる神あれば拾う神あり」という言葉を信じて仕事をしてきました。「自分の陰での努力は、必ずどこかで誰かが見ていてくれる」と信じ、次の仕事への意欲につなげていったのです。
商品開発アドバイザーH・B 山越
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