- 日替わりコラム
Fri
10/16
2026
向田邦子さんは昭和50年に乳がんの手術を受けています。術後は輸血による肝炎と右腕が動かないといった後遺症に苦労しましたが、執筆を続けるうちに右手は動くようになりました。この大病を乗り越える過程で、向田さんの作風に変化が訪れます。以下は、和田勉と向田さんの会話です。「わたしセックスが書きたいの」「セックスですか」「今のホームドラマは綺麗事ばっかり並べて絵空事に過ぎないと思うの。男女の本質的な部分が欠けているの」「でも、家族で見る茶の間でそれってどうなの?」「何も大胆な性描写に挑戦しようというのではないの。たとえば一杯の水、男女で分け合って飲むのもセックスでしょ?」「う~ん、なるほど」「男と女、生と死、その本質を表現したいのよ」。
この頃の向田さんは、タウン誌『銀座百点』で『父の詫び状』の執筆を開始。『だいこんの花』の最終シリーズを執筆し、ある程度ドラマの王道を極めた状態で、愛憎劇『家族熱※ 』の脚本をTBS金曜ドラマに提供しています。NHKでは昭和54年に和田勉演出で『阿修羅のごとく』パート1が放送されたことで、その傾向が顕著になっていきます。一方で脚本家・早坂暁と組んだ深町幸男は、NHKドラマ人間模様『冬の桃』を制作し、人間の生と死や男女の本質など、技巧を労さずじっくり人間に迫るドラマを手がけ、演出家として大成した頃でした。
※ TBS金曜ドラマで1978年7月7日から10月6日まで放送されたドラマ。全14話。
出演:浅丘ルリ子、三國連太郎、加藤治子、三浦友和ほか
写真技術研究所別所就治
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