- 日替わりコラム
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5/18
2026
昨年、ノーベル化学賞を受賞した北川進特別教授※1 は、受賞対象となったMOF※2 の研究について、「偶然の観察が研究の転機になった」と語っています。
当初の目的はナノサイズの導電体をつくることでした。銅イオンと有機分子を直列につないだ導電材料を設計しようとしたのですが、実際に得られたのは輪が連なったような構造でした。ところが、その内部の空間にアセトン分子が入り込んでいることに気づきます。この予想外の現象に着目し、分子を取り込める多孔性構造の研究へと方向を転換しました。その成果として1997年、分子が出入りできる多孔性配位高分子を報告し、現在のMOF研究の出発点となりました。
初めは周囲の理解が十分ではなく苦労したようですが、その後、同様の構造をもつMOFが世界各地で報告され、今や10万種以上といわれます。中には、大気中から二酸化炭素を捕まえることができるものや大気中にある僅かな水を回収できるものなど、地球温暖化や砂漠化への根本的な問題解決につながる可能性をもつものもあるようです。
実験の結果が失敗であっても、その失敗を基に研究を重ねて成功を収めるということは珍しくありません。偶然を楽しむ心のゆとりと好奇心がもたらす幸運なのです。
※1 京都大学理事・副学長、MOF 研究の第一人者、2025 年ノーベル化学賞受賞
※2 MOF(Metal–Organic Frameworks:金属有機構造体):金属イオン(または金属クラスター)
と有機配位子が規則正しく結合してできた多孔性材料の総称。内部にナノサイズの孔を持ち、
ガスの吸着・分離・貯蔵、触媒、センサーなど幅広い分野での応用が期待される
商品開発アドバイザーH・B 山越
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