- 日替わりコラム
Wed
2/3
2021
寒冷の厳しさもまだまだ残っておりますが、暦の上では立春を迎え、暖かい春風を待ち望む時節となりました。冷気を帯びる澄んだ空気の中では、あらゆるものが研ぎ澄まされて感じ入るような気がいたします。天空に煌(きら)めく星も、大地に根を張る花も、私たち人の心でさえも、一つひとつが、自ら命の尊厳を保ち、また、発露しています。
現代社会は、「個」を大切にする時代となりました。「個」を見つめるということは、「全体」を見つめるということに他なりません。なぜならば、「個即全体、全体即個」だからです。「即」とは、「=[イコール](同根・同体)」という意味で、同じ命の存在であることを示します。
私という「個」の存在は、天地人の命に抱かれた「全体」という存在であり、命の上では、私もあなたも、天も星も、地も花も、同じ「全体」という存在でありながら、それぞれに「個」という形を与えられた存在なのです。
だからこそ、「個」は「個」だけを見ていればいいという、自分本位の考え方では、「全体」どころか「個」そのものを見失ってしまうことになりかねません。天には星が、地には花が、人には愛が必要なように、「全体」の中で「個」そのものの「阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)」を尽くすことが、すべての命を大切にすることになるのだと思うのです。
合掌
下野薬師寺別院 舎那殿壇 龍興寺 副住職阿波建多
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