イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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Thu

4/29

2021

府中用水

 府中用水は、東京の郊外、国立市青柳など4カ所から多摩川の水を取水し、国立市、府中市内の低地部を流れています。今でも周辺の田んぼを潤す現役の用水路です。崖から出る湧水を巧みに取り込み、枝分かれした小さな水路では、石ころ、ブロック、板などで微妙に水位を調節し、田んぼに水を入れたり、また抜いたりできるような工夫が見てとれます。
 府中用水は、もともとは江戸時代に多摩川の旧流路を利用して、周辺の7つの村によってつくられました。当時は、そうした水の取り方をめぐって水争いも起きています。水路には水車もかけられ、粉ひきや撚糸(ねんし)にも使われました。その後、周辺の都市化によって田んぼは減少し、一方で生活排水の流入、戦後は駐留アメリカ軍の車両修理の際のグリース※1 が流入しての汚染、下水処理場がつくられる頃には処理前の汚水が流入したり、工場排水によると思われるカドミウム汚染が疑われたりと、一部は暗渠化(あんきょか)もされました。
 しかし、最近になって水のある豊かな環境が見直され、湧き水や田んぼがある場所に親水公園がつくられたり、遊歩道が整備され市民が散策をしたり、夏にはザリガニ取りを楽しむ子どもたちの姿も見られるようになっています。日本の「疎水百選」にも選ばれた府中用水は、こうしてみると確実に時代時代を映す鏡になっているように感じます。

※1 油よりも粘度が高い液状潤滑油のこと
※2 地下に埋設したり覆いをかぶせて、上から見えないようにすること

元中学校教員福田恵一

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