Kanbunken 環境文化創造研究所

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2021

虫供養塔(後編)

 文化12年(1815年)に佐瀬半兵衛が「虫聴(むしきき)」の道楽で使用する虫の繁殖に成功し、大奥でもその虫の音が聞こえたといいます。
 幕末、千葉県長生村では、鳴く虫を捕らえて江戸に売り込む虫売り業が盛んになりました。特に人工飼育で育てられた虫は、業者間で高価で取り引きされていました。
 長生村では成虫を東京下町の本所・深川・墨田向島・早稲田などの問屋へ卸しており、昭和の初期頃までは、東京方面に向かう一番列車は虫を運ぶ虫売りの人たちで賑わい、車内は虫の鳴き声で情緒豊かだったそうです。
 また、この地で採れるメダケを材料に、40軒あまりの農家が副業で虫籠を作っており、中でも長生村岩沼の虫籠作りの名人が作った虫籠は、作者の名を取って「六兵衛」と呼ばれました。
 この長生村岩沼に虫供養碑が建てられたのは大正後期で、虫売りに翳(かげ)りが見えてきた頃です。この時代になると活動写真※1 や蓄音機の普及、ラジオ放送の開始など、耳目で楽しむハイカラな媒体が登場したためです。虫売りの衰退を嘆き悲しんだ佐瀬松吉※2 らが百虫の精霊を慰めるため、大正12年(1923年)、村や東京の虫問屋の有志を募って石碑を建てました。

※1 明治・大正期における映画の呼称
※2 正しくは、「佐瀬吉松」との説もある

イカリ消毒株式会社 取締役・一般財団法人 環境文化創造研究所 理事谷川力

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