- 日替わりコラム
Wed
6/30
2021
日本の蚊の防除史は、『蚊(カ)の話』(栗原毅、北隆館)や、「日本の衛生害虫防除史」(日本衛生動物学会殺虫剤研究班)にわかりやすく解説されています。海外での害虫防除の歴史は、2000年以上前に遡ります。古代ギリシア、ローマ時代にヤグルマギクの種子の粉でシラミを駆除し、バイケンソウや砒素をミルクやワインに入れた液でハエを駆除したのが殺虫剤の始まりです。また、古代中国でもニシキギ、ヨモギ、ビャクブなどを燻(いぶ)して衛生害虫や貯蔵害虫を駆除し、後に砒素、硫黄などがヒゼンダニ、ノミ、シラミ、ウジに用いられました。
日本での蚊の成虫の防除は、万葉集に「蚊火(かび) 」の言葉とともに植物を燻して虫害を防ぐ様子が歌われています。蚊火は蚊遣火(かやりび)、蚊いぶし、蚊くすべと同義語で、各種の樹葉や野草などを燻(くす)べたといいます。江戸時代にはヨモギの葉、クスノキのおがくず、ミカンの皮などを燻し、明治になってからはマツ、ヒノキ、タバコが用いられていましたが、除虫菊が渡来した後は次第に蚊取り線香が使われるようになりました。
また、ボウフラ※ の防除は、明治初期には鉱物油や石油を水面に垂らし油膜をつくる方法が利用されていたようです。一方、蚊帳(かや)の起源は古代エジプトに始まり、日本には中国から1000年ほど前に伝えられましたが、今では蚊帳を使ったことがある人も少なくなりました。
※ 蚊の幼虫
イカリ消毒株式会社 取締役・一般財団法人 環境文化創造研究所 理事谷川力
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス