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Wed

8/18

2021

変動する熱帯雨林に棲む昆虫の季節適応

 熱帯雨林というと、常夏で植物が1年中生い茂っている楽園をイメージする人が多いかもしれません。しかし、実際はそのような環境はきわめてまれです。
 赤道に近いパナマの熱帯雨林では、気温は1年を通してほぼ26℃ですが、はっきりとした雨季と乾季があります。乾季には多くの樹木が落葉し、林床※ はとても明るくなり乾燥します。
 そんな森林に棲むテントウムシダマシは、毎年、雨季が始まる4~5月頃に交尾をして、一斉に繁殖地に飛び立って行きます。2か月すると新成虫が再び森林に戻って来て、シュロの木の根元に大集団を作り、残りの雨季6か月と乾季4か月を何も食べずに休眠状態で過ごします。夏至と冬至の日長の差は1時間しかありませんが、わずかな日長の増加を読んで休眠から覚める時期を調節し、飛翔筋と生殖腺を発達させます。
 しかし、雨季を告げる大雨の降る日は年によって3月下旬から5月上旬にまで変動するため、野外の成虫を調べると、4月中旬での飛翔筋と生殖腺の発育の程度が年によって著しく変化していました。あまり早く休眠から覚めると、代謝が上がって餓死する危険性があります。そこで、彼らは日長への反応に加え、湿度の上昇を察知して雨季の到来を予測し、休眠を終えるタイミングの微調整をしているのです。

※ 森林の地表面
参考文献:Tanaka S.( 2000) Entomological Science 3(1):147―155.

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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