若き開発者への手紙(8)怠らない準備でチャンスをつかむ

　「チャンスの神様は前髪しかない」ということわざがあります。チャンス(幸運)の神様は、前髪がふさふさで後頭部が禿げた好青年。自分に向かって歩いてくるが、すれ違うところまで来て初めて後頭部の禿げに気づき、「これが噂のチャンスの神様だ」と慌てて捕まえようと手を伸ばしても、時すでに遅し。後頭部に髪はなく取り逃がすということです。「チャンスは準備していなければ捕まえることができない」というギリシア時代からの教えです。
　また、ルイ・パスツール※ は「観察の場では、幸運は”待ち構える心“にだけ味方する」と言っています。人生いつどこで、どのようなチャンスが巡ってくるかわかりません。運を逃さないためには、常日頃から準備を怠らないことが重要だということです。
　「自分が課長だったら」などと上司のやり方を批判するのは、ありがちなことです。しかし、実は自分が課長になってからでは遅く、課長になる前に課長並みの仕事をして初めて、会社はあなたを「そろそろ課長にしてもよいのではないか」と認めてくれるものです。課長になる前に課長並みの仕事ができる準備をしていなければ、課長になるチャンスは巡ってこないでしょう。「運も実力のうち」という言葉は、まさに「準備を怠らずに運をつかんだ人」への言葉なのです。

※ フランスの生化学者、細菌学者。ロベルト・コッホとともに「近代細菌学の開祖」と呼ばれる

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