イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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11/12

2021

花のように生きる

 画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、弟テオへの手紙の中で、浮世絵師について次のように書きました。「たった1茎の草がやがては彼(北斎や広重)にありとあらゆる植物を、ついで四季を、風景の大きな景観を、最後に動物、そして人物像を素描させることとなる。かくも単純で、あたかも己れ自身が花であるがごとく自然のなかに生きる」と。
 フィンセントが繊細に感じ取った「花のように生きる真の日本人のやまとたましひとは何か」について、民俗学者の櫻井満は次のように応じています。「やまとたましひとは本来、心の持ちかた、思慮分別、ようするに事に処して行く才能を意味していたのです。日本人独特の魂のはたらきも、学才を基礎としないと適切十分に発動できません。やまとたましひはまことに平和でのどかな心のはたらきでありました。日本人にとって花とは神の依代(よりしろ)で※1 あり、そこに日本人は神意を見出し、前兆・先触れとしていました」。
 花々を観賞する美意識が生まれ、この美意識が花合(はなあわせ)や※2 花見の遊行、華道や茶道などの諸芸道に結実したのです。正月、雛祭、端午(たんご) 、七夕、重陽(ちょうよう)と、四季を彩る花々が家族の幸せとともにあり、晩秋には山茶花(さざんか)や貴船菊(きぶねぎく)が咲き、紅葉を愛でることもできます。素のままの美しい暮らしの幸福を温かく感じ、人世の日々を楽しく過ごしたいものです。

※1 神霊が乗り移るもの
※2 草花を出し合い、またその花を趣向に和歌を詠んで、それらの優劣を左右で競い合う風流な遊び

東京学芸大学 名誉教授・植物と人々の博物館 研究員木俣美樹男

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