伝説のスターを生んだ伝説の番組

　「みんなでスターを作る」という考え方が定着した1980年に、「花の中3トリオ」のひとりである山口百恵が引退しました。『スター誕生！※ 』から生まれたスターの中で最もレコードが売れ、テレビや映画でも大活躍した優等生の引退でした。
　日本武道館で開催されたファイナルコンサートでは、「私のわがまま、許してくれてありがとう。幸せになります」とメッセージを残し、歌唱終了後、ファンに深々と一礼をし、マイクをステージの中央に置いたまま、静かに舞台から去りました。まさに、伝説が生まれた瞬間でした。
　オーディション番組が数多くある中で、今もなお『スター誕生！』が語り継がれているのには理由があります。それは、スターを生み出し続けなければならない芸能界の性質において、画期的なシステム革命を起こしたからだと思います。つまり、特定の人たちの好みでスターを作り、上から目線で提供する時代は終わり、「みんな」でスターを作るという新しいシステムの誕生です。山口百恵の歌や映画、ドラマは今でも人気です。それは、スターを作った「みんな」が当時を称え、それらを懐かしんでいるからにほかなりません。「明日のスター」は、誰かが作るものではなく私たちが作るもの。『スター誕生！』という番組を通して、多くの人たちがそのことに目覚めました。

※ 昭和46年10月3日から昭和58年9月25日まで日本テレビで放送された、視聴者参加型歌手オーディション番組。山口百恵は、第5代の準優勝者

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