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Thu

6/16

2022

名前負け

 「名前負け」という表現を御存じでしょうか。これは、名前が立派すぎて、中身が追いついていないときに使う言葉です。たとえば伝統芸能などで先代の名前を継いだ人が、「まだ完全に名前負けしていますが、この名に恥じぬようしっかり芸を磨いてまいります」などと使うような場合が考えられます。
 しかし、これとは別に「名前を聞いただけで気後れしてしまうこと」という意味で使われている例も見られます。たとえばスポーツの大会で、名門校と試合をすることになった初出場校の選手が「相手の○○校は強豪ですが、名前負けしないように、平常心で練習の成果を十分に発揮したいと思います」などと話すような用法です。すでにいくつかの辞書でも、この意味が取り上げられています。ただし、いずれも「誤用」などとしており、現段階では、定着した使い方とまではいえないようです。文化庁の「国語に関する世論調査」でも、この意味で使う人はまだ1割に満たないという結果でした。
 言葉は生きものだといわれます。「名前負け」の未来はまだわかりませんが、本来とは異なる使い方や意味が少しずつ広がって、ついには市民権を得る場合もあります。元の用法を大切にしながらも、変化を誤用と決めつけず、冷静に観察してみる姿勢が大切なのかもしれません。

文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏

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