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Thu

10/13

2022

「負けず嫌い」の不思議

 「負けず嫌い」という表現の不思議に気づいたことがあるでしょうか。ネット記事の見出しを検索すると、「○○選手 寡黙な負けず嫌いのルーツに迫る」、「○○初段と○○七段 超負けず嫌いが共通点」など、たくさんの用例が見られます。意味はもちろん「負けるのを嫌うこと」ですが、「負けず」は「負ける」の打ち消し表現です。「負けず嫌い」を文字どおりに考えると、「負けないことを嫌うこと」と読めてしまいます。この「負けず」は、どのように考えればよいのでしょうか。
 この問題については、諸説あります。古い文章を探すと「負け嫌い」という表現が見つかります。「あれほど負けぎらいな先生も、打ちつづく物質的精神的の打撃に疲れはて打ちひしがれてしまったのであろう。」(『地震なまず』武者金吉著 東洋図書 昭和32年)。この例は、文脈からすると「負けず嫌い」と同じ意味でしょう。この「負け嫌い」が「食わず嫌い」と交じってできた表現であるという説があります。そのほか、打ち消しの「ず」を使った強調表現であるという説、「食わず嫌い」と同様に「負けたことがないのに負けるのが嫌い」の意味だったという説などもありますが、今のところ正解ははっきりしません。
 謎は深まるものの、この言い方を誤りとする人はいません。文法的に説明ができなくても、日々の生活に定着している表現があるのです。

文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏

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