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Wed

6/14

2023

誌上でめぐる世界の恐竜化石(12)イタリア

 恐竜の体で化石になるのは、骨や歯のような硬組織が一般的です。しかし、まれにツメや皮膚、内臓のような軟組織まで化石になった「ミイラ化石」が見つかることがあります。イタリア南部で発見された、スキピオニクスという全長50cm※1 、体重200gぐらいの小型肉食恐竜がいます。約1億1000万年前の白亜紀前期のヨーロッパは、たくさんの島が浮かぶ内海のような場所でした。海辺に棲んでいたスキピオニクスの死骸が、浅い海に沈んで静かに海底に埋没しました。スキピオニクスの化石から周囲の岩石よりも高濃度のリンが検出されたことから、リンのおかげで軟組織が残ったのではないかと考えられています。指先には角質のツメ、胴体には気管、肝臓、胃、腸などが化石になっていました。胃の中にはトカゲ類の骨、食道には魚類の骨、腸の数か所からトカゲ類のウロコなども確認されました。現代のワニ類は小さな骨は消化し、消化できなかった大きな骨などを吐き出します。また現代の肉食鳥類は、未消化の骨などはペリットにして吐き出します。その両者の間にいた恐竜も同じように吐き戻しをしたと考えられますが、スキピオニクスの場合、ウロコや骨が腸に達していることから、吐き戻しをしていなかったように見えます。しかし、発見されたスキピオニクスがまだ子どもで、吐き戻しを習得していなかったのかもしれません※2 。

※1 成体の全長は2mと推定されている
※2 「恐竜博2023」(6/18 まで)にてスキピオニクスの実物化石が展示されている(日本初公開)

独立行政法人 国立科学博物館 副館長・研究調整役真鍋真

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