- 日替わりコラム
Thu
6/15
2023
お釈迦さまが、仏の教えを開かれて以来、生きとし生けるものすべての平安と、幸せを願うその祈りは、インドから中国、日本へと伝わり、悠久の歴史(とき)を経て、今、私たちが生きる現代に息づいております。
日本の僧においては、真言宗(しんごんしゅう)の開祖、弘法大師(こうぼうだいし)・空海(くうかい)(774~835)が広く信仰を集めているところですが、大師は、すぐれた宗教家であるばかりでなく、能書家でも知られ、その他、土木技術や薬学など、さまざまな道に精通し、各地で温泉を掘りあてたり、庶民のための学校を設立するなど、生涯をかけて、衆生済度(さいど)のために尽力なされました。四国八十八か所霊場巡礼(お遍路)における、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」という「同行二人(どうぎょうににん)」の弘法大師信仰は、あまりにも有名です。
弘法大師は、「虚空(こくう)尽き、衆生(しゅじょう)尽き、涅槃(ねはん)尽きなば、我が願いも尽きん(一切衆生が済度されるまでは私の願いも尽きない)」という大誓願(だいせいがん)を立てられ、お釈迦さまなきあと、「56億7千万年後」という約束のもと、未来の仏である弥勒菩薩(みろくぼざつ)が、衆生済度のために下生(げしょう)されるその瞬間(とき)まで、今もってなお、高野山(こうやさん)・奥之院(おくのいん)にて、入定(にゅうじょう)(禅定(ぜんじょう)に入る)され、祈りを捧げ続けていらっしゃいます。
今年は、弘法大師「生誕1250年」という節目の年です。あらためて、弘法大師の祈りを胸に、日々を懸命に生きたいと思います。
合掌
下野薬師寺別院 舎那殿壇 龍興寺 副住職阿波建多
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