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Wed

8/9

2023

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(4)気持ちの表し方

 向田邦子という人は、家族の存在をとても大切にしていました。それは、ドラマ『あ・うん』を観ると顕著にわかります。特に、家族のために懸命に働いて生計を立てていた父・向田敏雄さんに対する愛情の深さは計り知れないものがあり、父親に怒られ、暴力を振るわれる時があっても、その気持ちの裏で、必死に家族のことを考えて行動している父親の姿を別の視点で見ているのです。
 ドラマ『あ・うん』の中で杉浦直樹さんが演じる門倉は浮気性で、愛人の禮子(れいこ)が子どもを宿します。向田邦子さんは、この題材を単に浮気を非難する不倫ドラマとして扱うのではなく、人間のさまざまな情感を重ね合わせて展開することで人間の見方を深く作っています。フランキー堺さんが演じる仙吉の家に、禮子が挨拶にやってきます。談笑しているところに門倉の妻・君子がやってきます。あわてて禮子を別の部屋に隠し、今度は君子の相談を受ける。お互いの気持ちが重く交錯する中、必死に禮子と君子の接触を避けようと取り繕う仙吉夫婦のコミカルな展開に、人間の情感の機微をまざまざと感じ取ることができます。
 このドラマの演出をした深町幸男は言う。「向田作品の人間の気持ちの表し方は決して古くはならないよ。ただ、描き方は人によって変わるかもしれないけどね。今撮ったら同じにはならないだろうな。」

写真技術研究所別所就治

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