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2024

ウェルビーイングと食品衛生(1)これからの食品衛生に必要な視点

 「ウェルビーイング」は、1946年に世界保健機関(WHO)憲章前文に初めて出てきた言葉です。「健康とは、単に病気や病弱な状態ではないということではなく、身体的にも精神的にも、社会的にも良好で満たされた状態のことである」と定義された時点では、その「良好な状態」を表していました。
 日本のウェルビーイング研究の第一人者である慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は、「当時は健康に足場を置いていた単語であったが、近年は幸せというニュアンスとして使われることが広まっている」と述べ、ウェルビーイングを「幸福学」であると位置づけています。
 WHOは食品衛生について、「食品の安全性、完全性、健全性を保障するのに必要なあらゆる手段」と定義しています。食品衛生は、狭義には「食品によって健康被害が発生しない」という安全性に焦点が当たることが多いですが、食品衛生という概念の中には、健全性(wholesomeness)や完全性(soundness)というさらに広がりのある概念がもともと含まれていたのは興味深いことです。
 時代や社会の背景によって、言葉の表す概念は変化します。この連載では、これからの食品衛生をウェルビーイングの視点から考えていきたいと思います。

リテールHACCP研究所山森純子

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