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2024

肺吸虫(2)

 ウェステルマン肺吸虫は2倍体型と3倍体型に分類され、ヒトにはどちらも寄生しますが、2倍体型のヒト感染例は少ないようです。その理由は以下のとおりです。
 (1)2倍体型はサワガニで多く寄生が見られ、3倍体型はサワガニよりもモクズガニに多く認められています。日本(特に1970年頃まで)では、カニ汁などでモクズガニのほうを喫食する機会が多かったと考えられます。カニ汁は加熱しますが、調理過程で調理器具についたメタセルカリア※1 を摂取し、感染が生じていました。また、モクズガニのほうが体が大きく、寄生数も多いのです。
 (2)肺吸虫の感染が多い九州地方では3倍体型が認められています。主としてジビエ料理(イノシシの生食)によって感染しますが、待機宿主のイノシシはモクズガニを好んで喫食します。サワガニを喫食した場合より肺吸虫の感染効率が良く、イノシシは筋肉に多くの幼虫を蓄えます。ヒトがイノシシの生肉を喫食すると、容易にウェステルマン肺吸虫に感染します。
 なお3倍体型は、宿主の肺に成虫が虫嚢(ちゅうのう)※2 を作り長期間感染に至ります(1隻(せき)※3 でも成熟する)が、2倍体型は同棲相手を求めて胸腔内を移行するので、胸水貯留や気胸が起こり、激しい病態を呈します。

※1 ヒトや動物への感染能力を持ちながら、生物体が膜を作り一時的に休眠状態となった幼虫
※2 成虫を入れる袋状のもの
※3 寄生虫の数え方で「匹」に相当

イカリ消毒株式会社 名誉技術顧問谷川力

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