イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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Wed

6/26

2024

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(11)『寺内貫太郎一家』(4)

 向田邦子さんは頑固で不器用です。しかし、それを短所と嘆かずに、突き詰めて考えているところがあります。ドラマ『寺内貫太郎一家』のセリフに、その性格が顕著に出ている箇所があります。家族の1人と、きん(樹木希林)とのやり取りです。
 「それにしてもよく判らないわねえ」。すると、きんが突然顔を上げて、「判らないところがいいんじゃないの。何でもかんでも判っちゃったら、長生きしたって、ちっともおもしろくありゃしない」と意見するのです。この台詞を言ったのは希林さんですから、性格的に言いそうとも思えますが、これが向田邦子さんの真骨頂といえます。
 向田さんのエッセイ集『夜中の薔薇』に「手袋をさがす」という話があります。向田さんは20代前半の頃、自身に合った手袋が見つからず「ならば着けないほうがまし」と、かじかんだ手で過ごしていました。するとある人が言います。「あなたのそのこだわりは、手袋だけの話じゃないかもしれない。今のうちにその性格を直さないと、一生後悔するかもしれないよ」。その言葉に苦慮し一考した結果が「貫き通してみる」ことでした。短所に居直ること。これが向田邦子さんの出発点です。その脚本は内容的に頑固で不器用ですが、理論で決めつけることなく言葉ひとつの中に想像性が広がります。

写真技術研究所別所就治

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