- 日替わりコラム
Thu
8/22
2024
「遊んでばかりいないで、ちょっとは勉強もしなさい」
「はいはい。もう少ししたらやるところだったのに」
「こら。『はい』は一回でしょう」
子どもの頃にこんな会話を経験したことはありませんか。返事は一回にしなさいと言われることがあります。大人も同様で、上司から仕事を頼まれたときに「はいはい」と返事をする人はあまりいません。
一方、「二つ返事」という言葉があります。この意味は「ためらうことなく、すぐに気持よく承知の返事をすること」(『日本国語大辞典』小学館)などとされています。つまり、良い返事のことを「二つ返事」というのです。たとえば「たまった書類の整理をお願いしたところ、いやな顔一つせず、二つ返事で引き受けてくれた」、「最近話題の店に誘われたので、二つ返事でOKした」のように使います。
「返事は一回」と言われることに影響されてか、良い返事の意味で「一つ返事」という表現を使う例がたまに見られます。混乱してしまうのも仕方ないですが「一つ返事」という言葉は辞書にありません。
ちなみに、「二つ返事」とは反対に、相手の言葉をまともに聞かないままのいい加減な返事や上辺だけの返事を「生返事」、「空(そら・から)返事」などといいます。こちらも覚えておきましょう。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス