- 日替わりコラム
Wed
12/11
2024
厚生労働省の食中毒統計調査では馴染みのある「ウエルシュ」という名称が使われていますが、学名はClostridium perfringensです。食中毒を起こす代表的な細菌であるとともに、交通事故や災害、および戦時下兵士の外傷時にガス壊疽(えそ)疾患を起こす細菌です。この細菌を発見した米国の細菌学者であるウィリアム・ヘンリー・ウェルチにちなんで、Bacterium welchiiと命名されました。その後、酸素の存在下では発育ができない偏性嫌気性菌であること、また広く土壌に芽胞として存在する有芽胞菌であるという特徴などから、クロストリジウム属に分類されています。
創傷・感染部位は菌の発育増殖、侵襲性が極めて速く、抗菌薬や高圧酸素療法の治療が間に合わないため、救命を目的として感染部位の切断除去を必要とする疾病です。また、腸内細菌叢(そう)の一部である本菌が肝膿瘍や敗血症を起こして、菌が産生する毒素(α毒素:ホスホリパーゼC)により強度の溶血や細胞障害で死に至る報告があります。
一方、食中毒統計では病因物質の細菌部門の患者数はカンピロバクターの約2000人に続き、ウエルシュ菌は第2位となっています(令和5年)。土壌由来の菌であり、食材の衛生管理と加熱後の食品の温度管理に心がけましょう。
熊本保健科学大学 生物毒素・抗毒素共同研究講座 特命教授髙橋元秀
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