イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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Wed

12/18

2024

冬に活動するイナゴ

 冬は昆虫をあまり見かけません。体が動かなくなるので寒い季節は苦手なのです。日本に広く分布するツチイナゴは成虫で越冬します。越冬中は落ち葉の下や植物の根元に身を潜めていると考えられています。しかし、野外条件下で成虫を観察すると、意外な行動が明らかになりました。冬でも地表に頻繁に現れるのです※ 。
 ペットボトルで作った透明な筒の片方を黒い紙で覆い、もう片方には下側だけ白い紙を敷いた装置を水平に置きます。そこに成虫を入れると、夜は黒いほうに隠れ、昼は白いほうに出てきます。毎時間行動を観察すると、最高気温が高い日ほど、多くの成虫が白いほうに出てきます。興味深いことに、朝に白いほうに出てくるときの温度は、黒いほうより低いのです。これは暖かさではなく、明るさに導かれて移動する正の走光性があることを示しています。一方、午後には逆に白いほうから黒いほうに移動するのですが、移動開始時の温度は白いほうが高く、明らかに温度勾配に逆らった行動をとりました。これは負の走光性です。この行動を制御する走光性の変化は、朝は温度の上昇、午後は下降という刺激に反応して起こることがわかりました。冬に枯葉しかない地表に出てくるのは、体を乾燥させ、体温を上げることによって免疫力を上げて、越冬中の生存力を高めているのかもしれません。

※  Tanaka, S.( 2024) Journal of Orthoptera Research 33: 71-86.

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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