イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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Thu

1/23

2025

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(17)「かわうそ」(筋書き)

 宅次は停年まであと3年の文書課長。9つ年下の妻・厚子は、まるで「かわうそ」のようでした。厚かましいが憎めない、ずるそうだが目の放せない愛嬌がある、いざというときにはしゃぎ楽しんでしまうため、明るい事象は良いのですが、身内の不幸や火事の際の振舞いは、宅次にとって気が気ではありませんでした。そして老後を考える時期になり、宅次が慣れ親しんでいた庭にマンションを建てる・建てないで揉めていました。言い合いになるものの、厚子のスイカの種みたいに黒光りする目を見ると、その愛くるしさから宅次は怒りを忘れてしまうのでした。実はこのとき、厚子は庭を銀行の社宅にする計画を進めていたのです。
 ある日宅次は脳卒中になり、家で静養していました。脳卒中になるとひがみっぽくなり、厚子の外出時にはあれこれと考えてしまいます。宅次はふと急性肺炎を起こし3歳で没した娘のことを思い出します。宅次は出張のため、その日のうちに熱のあった娘の往診をしてもらうよう厚子に言いますが、厚子が病院に連絡せず娘を置いてクラス会に出掛けたことを知ったのは、娘の死後、偶然会った看護師からの言葉でした。
 厚子の帰宅時、宅次は包丁を握ります。しかし、かわうそのような目と、いつもの陽気な返しに冷静になる宅次。しばらくして沈黙が宅次を襲い、”写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった。“

写真技術研究所別所就治

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