- 日替わりコラム
Wed
3/19
2025
寄生生物は、人や動物の体内に入り寄生することで知られていますが、最終宿主だけでなく、中間宿主が必要な種類も多くいます。そして寄生生物が、自らの利益のために宿主操作を行い、宿主の形態や行動を変えてしまう種もおり、数十センチほどの大きさになるハリガネムシは、その代表といわれています。
陸生生物であるハリガネムシは、交接・産卵場所である川や池に移動するために、寄生宿主であるカマキリを操り、川や池に自ら飛び込ませます。水中に入ったカマキリのお腹から出てきたハリガネムシは、自由生活をしながら交尾します。水中で産卵し、孵化した幼虫はカワゲラなどの水生昆虫(中間宿主の昆虫)の体内に移行します。カワゲラなどの幼虫は羽化して成虫となり、空中を飛び回ります。その飛んでいるカワゲラはカマキリに食べられ、生活環が成立します。
では、なぜカマキリは水に飛び込んで自殺的な行為をするのでしょうか。また、なぜそもそも水辺に近づきたくなる行為をするのでしょうか。神戸大学などの国際研究グループはその行動を解析し、水面の反射光に含まれ、電磁波の振動が水平方向に偏った「水平偏光」が目印になっていることを発見しました。寄生生物が宿主の光を感じる仕組みを巧みに操作して、宿主に行動を起こさせるという興味ある報告です。
イカリ消毒株式会社 名誉技術顧問谷川力
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