- 日替わりコラム
Thu
6/5
2025
自分にとってはなじみのある言葉が、他人に通じなかったという経験はありませんか。特に仕事で使っている用語には要注意です。それぞれの分野で、普段から当たり前に使われている言葉の中に、一般の人にはほとんど知られていないものが含まれる場合があります。
医療の世界を例に、いくつかの言葉を見てみましょう。まずは「頻回」。医療の分野では「頻回受診」、「頻回に水分を摂る」などとよく使われます。回数の多いことをいいますが、普段はあまり聞きません。歯科で使われる「齲蝕(うしょく)」もそうです。これは「虫歯」という意味ですが、一般の人で理解できる方は少ないでしょう。
さらに、日常よく耳にする言葉が、分野によって異なる意味で使われる場合があります。「大好きなグループが解散することになってショックです」などと使う「ショック」。医療の現場における「ショック」は、「血圧が下がり、命の危険がある状態」をいいます。
自分にとってどんなに親しい用語であっても、そのまま相手に伝わるとは限りません。使おうとする言葉が専門用語である可能性を感じたら、わかりやすい日常の言葉に言い換えるか、説明を付けて誤解を避けましょう。また、聞く側もわからない言葉があったら「ウショクってなんですか」と遠慮なく尋ねることが大切です。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス