- 日替わりコラム
Wed
7/2
2025
日本はモグラの種数が豊富で、「モグラ科」というグループには8種が含まれます。このうち地中性のものは6種で、残り2種は地上と地中の間、つまり落ち葉の下のような場所で活動する、半地中性の生活スタイルを持っています。「ヒミズ」という名前のこの2種は、モグラにしては小型で尾が長く、穴掘りに使う手のひらが小さいという特徴があります。地中生活に適応するにしたがい、尾などの突出部は短くなるという決まりがあるようです。ヒミズが日本に2種もいるのは不思議なことです。というのも、外国ではアメリカ西海岸と中国南西部辺りにそれぞれ1種が分布するだけなのです。このグループの化石はヨーロッパからも見つかっていますが、これらの地域を除いてすべて絶滅してしまったようです。現存する種は、モグラが地中性に適応進化する過程で誕生した「原始的モグラ」の生き残りなのです。
もっと原始的なモグラ科の仲間は地上で生活していました。その生き残りも中国南西部に現存していて、「ミミヒミズ」という名前がつけられています。僕はこの動物を中国雲南省で採集しましたが、確かにネズミをとるワナで捕獲できました。ミミヒミズの尾はネズミのように長く、その名の通り耳介が突出している点がモグラやヒミズと異なります。確かに「土にもぐる前のモグラ」といった風貌です。
国立科学博物館 動物研究部川田伸一郎
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