- 日替わりコラム
Thu
8/14
2025
コロナ禍を経て、多くの企業がリモートワーク環境を整備してきました。それに伴い、IT業界を中心にフルリモートワークを制度化した企業も数多く現れ、東京の企業でありながらも従業員は離島でも働くことが可能になりました。しかしながら、ここにきて、世界的な規模でフルリモートを一部廃止、または全面廃止する企業が現れています。
その理由はさまざまですが、廃止した多くの企業で共通するのは、コミュニケーションや組織への帰属意識の低下を危ぶむ声でした。企業組織は不特定多数ではない「特定の人間の集団」であり、強い紐帯で結ばれています。リモートワークにより紐帯が弱まると、たとえば同僚が仕事で困っていてもそれに気づくことが難しくなり、結果、生産性の低下を招きます。また専門職の場合、絆が薄れれば、個々の独立性が高まることになり、その企業文化の維持や継続が危ぶまれることにもなりかねません。もちろん、リモートワークの長所は誰もが知るところであり、とりわけ、子育てや介護などの事情を抱える家庭では大きな助けになります。
フルリモートに配慮が必要な点はあるものの、他方で全面廃止は明らかに時代への逆行でしょう。どうバランスを持たせるのかが今後の大きな課題となります。
東京造形大学 名誉教授地主廣明
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