- 日替わりコラム
Wed
9/10
2025
地上・半地中・地中という段階的な生活スタイルは、モグラ科が姿を変えながら進化してきた証拠なのですが、もっと面白いのはこれらの移行的な段階のモグラの存在です。本州の山地に生息するミズラモグラは尾が少し長めで、モグラの姿でありながらヒミズのような生活をしていると考えられています。また日本にいるヒミズ2種のうち、小型のヒメヒミズはより地上生活に適応しているそうです。確かにヒメヒミズをバケツに入れると、いつまでもぴょんぴょんと飛び跳ねていて、立体的な活動が得意なのだろうな、と思わされます。
モグラの生活の多様さに拍車をかけるのは水に潜る種の存在です。北米の東部に分布するホシバナモグラは、鼻面に22本の触手状の突起を持つ珍獣です。水辺を好んで生活しており、地中のトンネルから水中へと移動して採餌します。鼻の突起は非常に精密な触覚センサーで、少し触れただけで食べものを識別できるそうです。さらに水の中で鼻孔から出した空気(いわゆる鼻提灯)を突起で受け止め、再び吸い込んで鼻先にある対象物のにおいを嗅ぐこともできる技の持ち主です。
水に潜るモグラの仲間にはデスマンというモグラ科最大の動物もいますが、日本のモグラも意外に泳ぎは上手く、洪水のときなどにトンネルが水没しても大丈夫なくらいの泳ぎの技を持っています。
国立科学博物館 動物研究部川田伸一郎
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