- 日替わりコラム
Thu
10/9
2025
東京都薬用植物園で栽培しているイヌサフランを紹介します。
原産地はヨーロッパ中西部から北アフリカです。9月上旬から10月中旬にピンク色の花が見られます。薬用部位は種子と鱗茎(球根)です。生薬名は種子が「コルヒクム子」、鱗茎(球根)が「コルヒクム根」と呼ばれ、痛風の症状改善に用いられるコルヒチンの製造原料として用いられていました。鱗茎(球根)は土や水がなくても開花します。ただし、この鱗茎(球根)を含む全草には有毒なアルカロイドが含まれています。鱗茎(球根)はジャガイモやタマネギに似ているため、誤食すると、嘔吐や下痢、呼吸麻痺などの中毒症状を引き起こします。重症の場合は死に至ることもありますので、注意してください。
春に芽生える葉は、同じ頃に芽生える山菜のギョウジャニンニクと似ており、誤食による食中毒も起きています。ギョウジャニンニクの葉はちぎってもむとニンニクの香りがしますが、イヌサフランはニンニクの香りはしません。この葉は、6月頃には枯れます。
名前や花の形がよく似ているサフランは、イヌサフランとは別の植物です。イヌサフランを観賞用として栽培する場合は、食用の植物とは一緒に植えず、「イヌサフラン」とネームプレートをつけておきましょう。また、鱗茎(球根)をキッチンなどに放置しないようご注意ください。
東京都薬用植物園 主任研究員中村耕
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