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2025

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(26)薩摩揚(解題)

 向田邦子さんは、昭和14年1月から昭和16年春まで鹿児島で暮らしていました。ご本人が「故郷もどき」と言うほどですから、鹿児島の経験は脳裏に焼き付いていたのかもしれません。
 時系列で言うと、鹿児島市立山下小学校※ で3年生から6年生初期までを過ごしていたことになりますが、子どもの成長過程で言えば、もっとも多感な年頃だったと思います。そして、人の在り方や関係性、物事の善し悪しや恥じらいを知る時期でもありました。そういった経験が後の創作活動に生かされていったことは、多くの作品群を見ればわかります。記憶力に優れた向田さんは、そのアビリティを活用して、かつて見た人々の姿や営みを活字に置き換えていったのだと思います。
 鹿児島市の城山町に「かごしま近代文学館」があります。この文学館には鹿児島にゆかりの深い作家の常設展示やライブラリーが多数設けられています。2階に上がると、「向田邦子の世界」と題した向田さんの常設展示が行われています。ここでは生原稿も見ることができます。向田さんの文字は非常に読みにくいです。これは考えたことをドンドン書く作家や演出家に特有のスタンスです。当時、印刷会社には向田さんの直筆を解読する専門スタッフが数名いました。ほかに専門スタッフがいた作家は早坂暁さん、そして演出家の深町幸男です。

※ 鹿児島市立山下小学校は、向田邦子さんが在籍時は市立山下尋常小学校

写真技術研究所別所就治

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