- 日替わりコラム
Wed
10/22
2025
街中のさまざまな場所でネズミを見かけますが、彼らはどれくらいの距離を動き回っているのでしょうか。このことを調べる方法の一つに、遺伝子解析があります。なぜなら、ネズミは動き回る範囲内で交配するため、遺伝子が似ているネズミ同士は同じ「地域ネズミ」と考えられるからです。
そこで研究者たちは、ブラジルのサルヴァドール、アメリカのニューオーリンズとニューヨーク、カナダのバンクーバーの4都市で150匹以上のネズミを捕獲し、遺伝子解析を行いました※ 。その結果、あるネズミと遺伝的に似たネズミが見つかるのは、すべての都市で500m以内であることがわかりました。また、たとえ500m以内であっても、オフィス街のような資源が乏しい地域や、幅が広く交通量の多い道路や水路の両岸にいるネズミは、遺伝子が似ていないこともわかりました。これらの結果から、ネズミは生まれた場所から半径250mほどの範囲で一生を過ごす傾向が強いことが明らかとなりました。
また、道路や川などの都市構造がネズミの移動や交配を妨げ、遺伝的な壁を作っているのです。つまり、街中のさまざまな場所で見かけるネズミたちは、それぞれ異なる「地域ネズミ」である可能性が高いと考えられます。
※ Combs M., et al:Urban rat races: spatial population genomics of brown rats(Rattus norvegicus)compared across multiple cities, Proc. R. Soc., B 285: 20180245(2018)http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2018.0245
東京大学 大学院農学生命科学研究科 准教授清川泰志
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